ここからサイト共通メニューです。

サイト共通メニューをスキップします。
 

大学概要

clear

学長メッセージ

Message from the President

clear

新春対談 「宮城における教育の将来」
高橋 仁 宮城県教育委員会教育長・見上 一幸 宮城教育大学長
東日本大震災から5年という節目の年に当たることを踏まえ、宮城における教育の将来像について、 高橋仁宮城県教育委員会教育長と見上一幸宮城教育大学長が対談を行いました。
(平成28年1月5日)



震災から5年という節目の年に当たり、復興が進んでいるようにも見えますが、現状について、そして今後の復興支援についてどのようにお考えですか?

見上学長:大学としては、できるだけ被災地域の教育復興に貢献したいと考えてきました。その中心であった教育復興支援センターは、国からの支援が5年目の今年で終わります。ただ、被災地ではまだまだ課題が山積しており、今後は大学が自力でこのセンターを未来型のセンターに模様替えして活動を続ける準備を進めております。

高橋教育長:宮城県では宮教大をはじめ県内外の大学からご支援いただきながら、児童・生徒の心のケアをしております。仮設住宅から通学している子供たちもまだ多く、そのような中での学びの支援として、子供たちの学習する環境を維持することに取り組んでまいりました。仮設住宅から通っている子供たちは、いまだ2800人を超える状況です。学校の敷地内に仮設住宅があるところも24校あります。震災から5年経過するところですが、まだまだ教育支援をお願いしなければならないと考えています。昨年も宮教大の教育復興支援センターからは300人を超える学生が多様な形で被災地の子供たちの支援に力を尽くしてくださいました。改めて感謝申し上げるとともに、今後もぜひそういった応援を継続していただければと思っています。

見上学長:教育大学は、将来、先生になる人を養成しているわけですが、その中でも特に被災地支援に当たったボランティア学生というのは、非常に意識が高くなるし、思いやりの気持ちなども深まっているように思います。本学が仲介する形で教員養成大学を中心とした全国の学生がうちの学生と一緒に被災地の学校へボランティアに参加してくれていますが、それらの大学の学長からも、ボランティアから帰ってきた学生はやっぱり一回り大きくなっている、ぜひこれからもこのようなチャンスをくれないか、との声をいただいたりしております。引き続き全国の大学の協力をいただきながら、頑張っていきたいと考えております。

今後はどのような支援が必要とお考えですか?

高橋教育長:県内沿岸部での子供たちの体力の大きな低下を懸念していましたが、毎年実施している運動能力調査の結果では、必ずしもそうではないようです。学校によってバラつきはありますが、それぞれ学校現場で努力しているようで、そのような工夫が体力の大きな低下を何とか防いでいるのではないかと思っております。ただ、改善して向上するところまではなかなか進みませんので、今後の学力の向上とともに、体力の向上というのが大きな課題だと考えています。
 それから、震災を体験している子供たちが今、小学校、中学校、高校、特別支援学校それぞれにいます。その子供たちは、自分の震災当時の体験を言語化することがなかなかできない。震災発生当時はなかなか言葉にできなかった、言葉にもしたくなかった子供たちがたくさんいたわけですが、5年経過し、少しずつそれを言葉で表現することによって、自分の中で客観化する、あるいは一つの事実として受け止め前に進んでいくことができるのではないかと考えています。併せて、自分が体験したことを言葉にするのが難しい子供たちも少なからずいますので、そのような子供たちの心のサポートやケアも大きな課題だと思います。

見上学長:母語の言語技術、自分の考えを言葉でまとめることは非常に大事です。全ての学力の基礎だといわれています。震災復興という観点からも、やはり自分の気持ちをうまく言葉に置き換えられるということは大事ですね。

昨年は、大学教育においても改革の方向性や財政についての話題がありました。教育界においてもいじめや不登校の問題などがクローズアップされました。それぞれ、それらの課題についてどうお考えでしょうか?

見上学長:大学改革に関しては、だいぶ新聞紙上にぎやかになりましたが、本学ではもう既に改革を行っており、地元の皆様方からもご理解をいただいているものと考えております。
 ただ、国の財政が非常に逼迫していることは分かりますので、われわれも自己収入を増やすなどの努力をしていかなければいけません。教育大学ですので、なかなか産学協働は進みませんが、苦労しながらも引き続き国や地域のご理解やご協力を得て参りたいと考えているところです。まずは、地域の子供たちを育てる先生を養成するということにしっかり取り組んでいきたいと思っております。
 その上で、従来は教員の養成が国立大学の役割で、研修については県、市にお願いしていたところですが、これからはもっと新しい形で力を合わせていく時代だと思います。多様な形で、一層連携を深めて協力させていただければと考えております。

高橋教育長:県としても、宮教大と連携協定を結び、一体となって、教員の養成から採用、研修まで一連のものとして取り組んでいかなければならないと考えてきたところです。今回、中教審の答申でもそのような方向性が打ち出され、この点についてさらに強化しなければと思っております。
 この点に関して、大学で改革の取組を進めていただいていると認識しています。今後さらに改革を進めていくためには国からのさらなる支援も必要ではないかと考えています。
 いじめや不登校の問題への対応については、県の教育委員会として、できる限り早いうちにいじめを見つけて、小さいうちに解決していこうとしているところです。認知件数は1万7000件ぐらいありますが、この数字は、学校現場において積極的に見つけようという姿勢の表れであると思っています。大切なことはできるだけ小さいうちに解決を図ること、そして、解決したと思われるものでも、継続して見続けていくということであり、単に謝罪したから解決ということではないと考えています。そこにあるのは人間関係のトラブルですから、いつ、また違う形で出てくるか分からない。円満な人間関係を作っていくためには、いじめがあった、解決した、ということで終わらせるのではなく、継続して見ていって、人間関係がより円満になってきたということを子供たち同士が自覚するところまでいかないと、本当の意味での解決にならないと思っています。そのためには、先生方の意識の高さ、アンテナの高さが極めて重要です。その力は教員になってから自動的に身につくというものではなく、大学での養成の段階から、子供たちを見る目や、アンテナを高くして情報を集めていく力などを育成していくことも大事かなと考えています。

見上学長:いじめは広くしかも深い問題ですので、大学としてもなかなか自分たちのスタッフだけではカバーし切れない部分がございます。昨年、本学と上越教育、鳴門教育、福岡教育の4教育大学でいじめの問題を一緒に勉強し、それぞれの大学が得意分野を生かしながらお互いに研究していきましょうという「BPプロジェクト(いじめ防止支援プロジェクト)」を発足させました。これは鳴門教育大学が中心になってまとめてくれていますが、本学としてはそれをベースにまず地元の宮城県でしっかりその成果を生かしたい、そうしなければいけない、と思っております。昨年12月に最初のフォーラムを開きました時には、宮城県にもいろいろご協力いただき本当にありがとうございました。今後も、教員養成の段階でしっかり取り組むと同時に、その成果を先生方にも情報発信していきたいと考えております。

高橋教育長:我々としても大学の成果を生かして学校現場から少しでもいじめが減っていくように努力していきたいと思っております。

昨年末に中教審から答申が出されました。様々な教育課題に対して、大学と教育委員会がより連携して、養成・採用・研修について一体的な改革が求められたものと理解しておりますが、答申の受け止めについてはいかがでしょうか?

見上学長:昨年12月に、ある意味、歴史的な中央教育審議会の答申が出されました。本学では従来から、教師自身も生涯学び続ける、そして、その学び続ける教師に生涯にわたって勉強する機会を提供していくことに協力していきたいと考えておりましたので、その流れに沿った答申だろうと受け止めております。
 仙台あるいは宮城県には教員養成を行っている私立大学も多数ございます。そういう大学とも力を合わせて、とにかく教員の質を向上させていく、これはものすごく大事なことです。教育長も日頃からおっしゃっているように、子供にとって先生は大きな影響を与えますので、とにかく先生方にはその年齢に応じた力量を付けていただく、絶えず勉強していただく、そしてそのような場の一つとして大学が大きく貢献したいと考えております。中教審の答申を先取りする形で仕組みができないか、私学の学長さんともいろいろお話するところから始めております。

高橋教育長:私も、今回の答申については、これまでの大学での養成、教育委員会による採用そして研修という、それぞれ三つに分かれていたことについて、これを一体的にやらなければいけないということを明確に示した点で、本当に画期的な内容だと思っています。今後ともそのような意識を持ちながら、今後さらに改善に向けて取り組んでいきたいと考えています。これまでも大学に対して教育委員会として種々のお願いをしてきましたが、今回の中教審答申が出たことで、方向性が明確となったことで、大きな力を得た思いでおります。同時に、教育委員会としても、これまで以上に採用や研修について改善を進めなければならないと、ある意味、宿題をもらったような気もしているところです。これまでも教育委員会として学び続ける教職員の研修体系を作り、宮教大には教員研修の講座の開講や、10年研の研修を大学の講座を受けることで研修に置き換えるといったことをしていただいておりますが、今後さらに大学の養成段階も含めて、われわれの採用、そして研修の在り方について認識を同じくしながら全般をブラッシュアップしていきたいと考えております。

高大接続改革についても、高校、大学のそれぞれに改革が求められております。学び方や評価等、難しい問題や課題がありますが、改革に向けてのお考えをお聞かせください。

見上学長:入試の在り方については以前から話題になっており、本学でも、今後どういう形とすべきか、学内にワーキンググループを作って検討しているところです。
 従来の入試では、公平性という観点から、教科の成績が1点でも高ければ合格できる形になっていたわけですが、やはり子供たちにとっての優れた教師を育てるといった視点で考えると、もう少し本人の教師に対する志とかも考慮したうえで合格させなければいけません。ディプロマポリシーに沿った受験生をどう受け入れるかが、今、大きな課題としてあります。教師としてどのようになりたいかを十分考慮できる形の入試というのも検討していきたいと考えております。これは非常に難しい問題ですが、入学試験は、ある意味もう少し手間暇かけてやらなければいけないのかもしれません。例えばアメリカのAO入試では、非常に長い時間をかけて一人一人の学生を選んでいくようです。本学でもなるべく従来にも増して、時間をかけて丁寧な入試をやらなければいけないと考えているところです。

高橋教育長:高校教育改革や高大の接続の在り方、そのための大学入試の在り方について方向性や理念に関してはぜひその方向で、と考えていますが、具体的な方法となりますと、特に大学入試については客観性や公平性の担保という点でハードルがかなり高いのではないかとも感じております。高校側からすれば、大学入試が変わることによって、高校教育も変わってくるという面があります。大学入試改革が高等学校の教育に混乱を与えないような導入の仕方をお願いしたいと考えています。
 高校教育そのものについては、どうしても知識の量を増やすことが中心になってきていたわけですが、実際社会に出てみると、単に知識量が多いだけでは、なかなか活躍することは難しく、自分から進んで課題を見つけてそれを解決しようという意欲や能力、他の人と一緒に課題解決の方法を考える協働する力、創造力などが実は重要であり、その部分を高校の段階でどれだけ身に付けさせるかということが、知識の量を増やしていくことと同様に大事です。そこはさらに改善していきたいと思っています。

見上学長:本学の場合、これまでもいろいろな入試の試みをしてきました。結果的には今の形に落ち着いていますが、これまでの経験も生かしながら、きっとまた新しい入試の形を導き出せるだろうと思っております。
 今の試験では、短時間にどれだけの唯一の解を導くかということが問われています。でも、もう少し時間をかけてでもオリジナリティの高い解を得られる、あるいは解が二つ三つあるものでもきちんと自分なりの解を導き出せる、そういった能力も非常に大事だと思います。そのような面もいろいろ考慮して、試行錯誤しながら入試の在り方を考えていきたいと思います。

大変難しい問題についてお伺いしてきましたが、最後にそれぞれ、未来の子供達や学生、教員に向けての夢をお聞かせください。また、宮城教育大学は、今後どのような教員の養成を目指していくとよいのか、お考えをお聞かせください。

高橋教育長:今、われわれは唯一解のない社会に生きているということをいろいろなところで実感しています。先ほどのいじめの問題についても、一人一人背景があって、それらを理解して、どう対応しどういった方向で解決していけばいいかを考える、それが教員の仕事になっています。そうすると、一つの正解があって、それが唯一絶対の解だという意識では、いじめの問題に対して臨機応変に適切な対応をすることが難しくなります。これまで以上に柔軟な物の見方ができ、幅広く物事を考え、何よりも子供の心を理解できる教師を、ぜひ宮城教育大学から育てていただくよう期待しています。われわれとしても、教師の採用、研修の改善をさらに推進し、学び続ける教師に対するバックアップをしっかりとしていきたいと思います。
 宮城県内全ての学校が、子供たちにとって学びがいのある、行きたいと思う場所になる、ということが私の夢です。

見上学長:ありがとうございました。そういうご期待に沿えるような大学教育を、ぜひ進めなければいけないし、そういう方向で私も考えておりますので、精いっぱい大学としても努力したいと思います。
 オープンエンドの問題に、どう自分で解を導くかということに関して、今、言われていることの一つがアクティブラーニングという言葉ですが、それが形式に走らず本質をきちんと捉えて、本来のアクティブラーニングになるような形を、教育界でも学校でもやってほしい。そのためにはまず教員養成の段階で、大学自身がやらなければいけないと思っております。まずは学生のうちからきちんと認識させて、そして先生になってほしいと思います。その辺りはしっかり努力したいと思います。
 昨年の暮れに、東京でOECDの報告会がありまして、聞くところによると、その席で事務局長のシュライヒャーさんが、従来は子供たちに教育で地図を持たせていたけれども、これからは子供たちに羅針盤を持たせて、そして卒業させることになるというような表現をされていたそうで、私自身もまさに同感で的を得ているなと思いました。子供たち自身がいろいろと調べた知識や体験を基に、しっかりした考えを持って常に解を導く、なおかつ自分が間違っていると思うときにはすぐ変えられるような柔軟な思考を持つ、そういう先生を養成していきたいと思っています。ぜひ、ご期待に沿えるような形で大学も頑張りたいと思います。


プロフィール

高橋 仁 宮城県教育委員会教育長
宮城県教育庁教職員課課長補佐、宮城県角田高等学校長、宮城県教育庁高校教育課長、教育次長等を歴任
平成24年4月より現職

見上一幸 国立大学法人宮城教育大学長
平成元年4月 宮城教育大学准教授
平成6年11月 宮城教育大学教授 、以後、附属環境教育実践研究センター長 、附属小学校長、学長特別補佐 国立大学法人宮城教育大学理事(総務担当)・副学長を歴任
平成24年4月より現職
専門は生物学




clear
先頭へ戻る